リハビリによって脳が変わる!シナプス可塑性とシナプス分子1

【脳機能】記憶のメカニズム~海馬と連合記憶で対連合記憶・対符号記憶について説明しました。

対連合記憶とはあるものを見て関連性のあるものを思い出すことです。これは例えば写真を見て子供の頃を思い出すというような昔のことを思い出すだけではなく、新たに関係を作り出すこともできます。そしてこれは

今まで無かった関係性が新しくできるので、神経回路が組み変わって新しい神経回路ができることによってできるのではないかと考えられています。

大脳はたくさんの神経細胞からなっています。この神経細胞はそれぞれがつながりがあります。そのつながっているところをシナプスと呼んでいます。この神経のつながり方には方向があり、1つの情報を送る神経細胞から軸索が出ています。その軸索から神経を送られる方の細胞の樹状突起に接触をします。
その接触している部分のことをシナプスといいます。

 

情報を送る側をシナプス前部(軸索終末)情報を受け取る側をシナプス後部(樹状突起スパイン)といいます。

このシナプス後部は樹状突起という棘のような構造をしています。

対連合のように全く異なる事象を新たな事象として連合するためには神経内部でどのようなことが起これば良いのでしょうか。新たな記憶を形成するためには神経回路が変わる必要があります。
今回はこの神経回路がどのように変わっているのかについて説明していきます。

 

 

海馬・側頭葉と記憶、連合記憶に関してはこちらをご参照ください。

 

 

学習に伴うシナプスの構造的変化

新たな記憶を形成するために、シナプスが増えたり減ったりしているということがわかってきました。

 

 

この突起状のものがシナプスです。右の写真と左の写真は数週間の期間を空けてシナプスの変化を比較したものです。右と左とで数に変化があることがわかると思います。新たに増えているものもあれば減っているものもあります。したがってシナプスというのは日々学習していると増えたり減ったりしているということが推測されます。

 

記憶とシナプスの数的変化

動物の脳を長期に渡って観察することができる特殊な顕微鏡を二光子顕微鏡といいます。これを使うことによってシナプスの構造が日々どのように変化するのかを調べることができるようになりました。

例えばカナリアに歌を覚えさせます。

下のグラフでは縦軸がお手本となる歌にどれくらい近づいているか、横軸がシナプスの数がどれくらい変化したかの指標となります。
つまり歌の上達とシナプスの関係には非常に良い正の相関がみられます。つまりシナプスの数の変化が大きい動物は物事をよく記憶することができているということがわかります。

 

 

学習をしたときにシナプスの変化が起こっている。その変化が長く残るということが記憶と関連があるのではないかということが示唆されます。すなわち私たちが覚えたり何か経験をしたときには、頭の中でスパインが入れ替わりどんどん新しい回路を作っているのではないかということが考えられます。

では新しい回路ができるということは新しいシナプスが出来たり、今までのシナプスが入れ替わっているだけなのでしょうか。

 

シナプス効率の変化

記憶形成の際に重要な役割を持つシナプスですが、その数の変化の他に
シナプスの効率が変わるということがあります。

 

 

一番左側の樹状突起の1つのシナプスに非常に強い人工的な電気刺激を与えます。するとその2分後にはその大きさが2倍程度大きくなっていることがわかると思います。これが30分、1時間経過しても一度大きくなったシナプスは大きくなったままであることがわかります。

このようにシナプスの大きさは電気的な性質と関係があることがわかっています。

 

シナプス可塑性~長期増強(LTP)と長期抑制(LTD)

電気刺激をして大きくなったシナプスはよく電気を通すようになります。

このような現象のことを長期増強(LTP)といいます。

 

 

これまでは弱い刺激で弱い反応しか示さなかったシナプスがLTPによって弱い刺激でも強い反応を示すことができるようになるということで、これも一種の回路が変わるという性質に貢献していると考えられています。

 

 

一方で刺激がくる前に比べてある条件を満たすとシナプスが小さくなるという現象があります。

これはLTPと比べて今までの反応よりも反応が小さくなります。

これを長期抑制(LTD)といいます。

 

 

このようにLTPとLTDが組み合わさることによって、シナプスの伝達の性質が変わることをシナプス可塑性といいます。このシナプス可塑性があることによってこれまでの回路に変化が生じて新しい反応性を示すことができるようになります。

つまりこのシナプス可塑性によって私たちがあるものを見て関連性のあるものを思い出すような連合的な記憶を形成したり、あるものに対して選択的な反応を示すことができるようになるのではないかと考えられています。

 

 

シナプス可塑性に関わるタンパク質の合成と遺伝子発現

シナプス可塑性が起こる際に関係する分子がアクチン繊維です。

アクチン繊維は形を整えるために非常に大切な分子で筋組織に多く含まれています。

シナプス可塑性のひとつであるLTPが時間的に長く維持されるためには、神経細胞の中で新しい遺伝子が発現したり、タンパク質が新しくつくられることが重要だということがわかってきました。

LTP実験のグラフです。横軸が時間、縦軸がどれくらい神経の伝達効率が良くなったかということを示すグラフです。

赤い矢印の部分で刺激をすると、通常は伝達効率が上がってそれが10時間程度維持されていることがわかります。

 

 

刺激をした時点でタンパク質合成の阻害剤であるアニソマイシンという薬を投与しタンパク質の合成を止めてしまいます。刺激をした時点ではLTPのような伝達効率の上昇がみられます。ですがその後は徐々に低下し10時間後には元と同じ状態へと戻るという現象がみられました。

 

 

最初のグラフも次のグラフも同様に刺激直後では伝達効率の上昇がみられます。ですが10時間後の伝達効率に明らかな差が認められました。

つまりLTPおよび記憶にはタンパク質の合成や遺伝子発現が必要だということがわかってきました。

 

まとめ

新たにものごとを覚えたり、新たな記憶の関連を作り出すためには神経の回路が変わることが必要なのではないかということを説明しました。そしてその神経回路が変わる現象は私たちの頭の中で実際におこっています。それがシナプス可塑性というものです。

シナプス可塑性、何か記憶をしなければならないようなイベントが起こったときにはタンパク質の合成や新たに遺伝子が発現することが必要だということがわかってきました。さらに最近の研究ではそれがシナプスの機能を調節している分子であるということがわかってきました。

このように脳神経科学でも新たな学習を続けることで脳が変化し、新たな神経回路がつくられるということが証明されています。適切なリハビリを続けることで必ず変化が起こります。私たちはあきらめずに本物のリハビリを提供し続けていきます。

出張リハビリ和海 なごみ(株)

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