日本の医療保険制度の概要 – 医療保険の被保険者と制度分立について –

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日本の医療保険制度の概要
目次
  1. 医療保険制度の特徴
  2. 制度分立(職域保険と地域保険)
  3. まとめ
  4. 参考資料

日本は国民皆保険制度といってすべての国民がなんらかの医療保険に加入することが義務付けられています。
年齢や収入に関わらず生まれてから死ぬまで全ての国民が平等に医療給付を受けることができるという制度です。
今回はこの国民皆保険制度の被保険者と制度について説明します。

医療保険制度の特徴

  1. 皆保険 社会保険方式
  2. 制度分立=職域保険と地域保険に大きく分別され、職域ごとにさらに分立されている

皆保険制度と被保険者

日本の医療保険は年金同様にすべての国民に加入が義務付けられている皆保険制度ですが、年金よりも徹底しています。
年金の場合は20~60歳までの人が加入している皆年金でしたが、医療保険の場合は年齢に関わらず全ての人が保険に加入しているはずという意味での「皆保険」となっています。
なので0歳であってもどこかの保険制度には加入していることになっています。
また年金受給者もどこかの保険の加入者となっています。
無収入の人はどうなるかというと、その場合は保険料は払わないけれどもどこかの保険制度には加入しているということになっています。

ではこの保険料は誰が支払っているのかというと、お金のある人が払っているということになります。
無収入の人は誰かから扶養を受けて生活しているはずなので「被扶養者」と呼ばれます。
つまり扶養している人に付属している人という形になっていて、その扶養している人が加入している保険制度に一緒に加入することができるということになり、病気になれば医療の給付が受けられます。
したがって国民皆保険といわれるように年齢や収入に関わらず全ての国民が保険制度でカバーされているということになります。

社会保険方式(保険者と被保険者)

全ての国民に加入が義務付けられている医療保険制度は社会保険方式という方式をとっています。
つまり皆保険とはなっていますが、保険料の支払いをおこたると医療給付を受けることができないということです。
では典型的に保険料を支払えない生活保護の場合はどうなるのでしょうか?
生活保護受給者はどこの保険制度にも加入していません。ですが、病気になった場合は生活保護で医療を受けることができるので医療の給付を受けるという面ではカバーされているということになります。

このように皆保険制度は皆年金制度よりも徹底しています。
年金制度では「被保険者」と「受給者」が別々に存在します。
医療保険制度の場合は「被保険者」が病気になると「受給者」になります。
これによって「被保険者」の資格を失うというわけではありません。
つまり「被保険者」兼「受給者」という形で同じ人が両方の面を持っているということになります。

年金制度との違い

医療保険制度が年金制度と異なるところは「被保険者」ではない人も保険に加入しているというところです。
この被保険者ではない人というのは「被保険者」に扶養されている人のことです。
医療保険制度にはこの「被扶養者」という概念が存在します。

年金制度の場合はサラリーマンの夫に扶養されている専業主婦は「被扶養者」ではなく「第3号被保険者」といいます。
つまり被保険者となります。
ところが医療保険制度の下では専業主婦は「被扶養者」となり被保険者ではないということになります。

制度分立(職域保険と地域保険)

年金制度の場合は「国民年金」という全体をカバーする制度があり、その中で1号・2号・3号被保険者に分かれています。

一方医療保険制度には全体をカバーするものはなく、制度自体がいくつかに分かれて存在しています。
したがって医療保険の加入者はどこの制度の被保険者なのかがそれぞれ違うということになります。
日本にはこの保険制度=保険集団が何千と存在しています。

制度名 保険者 対象被保険者
健康保険 協会けんぽ(旧政府管掌) 全国健康保険協会 主として中小企業で働く者
組合管掌 健康保険組合 主として大企業で働く者
船員保険 政府 船員として船舶所有者に使用される者
共済 国家公務員 共済組合 国家公務員
地方公務員等 共済組合 地方公務員等
私学教職員 事業団 私学の教職員
国民健康保険 市町村 健康保険・船員保険・共済組合等に
加入している
勤労者以外の農業者、
自営業者、一般住民等
国民健康保険組合
後期高齢者医療 後期高齢者医療広域連合 75歳以上の者、65歳以上
で寝たきり等
の状態にある者

職域保険の概要

国民皆保険制度は大きくは職域保険と地域保険に分かれています。
サラリーマンなど誰かに雇われている被用者とその人に扶養されている人が加入するものを職域保険といいます。
そしてそれ以外の人が加入するものが地域保険になります。

これらは大きな制度として分かれて存在しているわけではなく、各職場ごとや市町村など各地域ごとにさらに細かく分かれて分立して存在しています。

上の表をご参照ください。

大きく分けて上の3つ(健康保険・船員保険・共済)が職域保険で、国民健康保険と後期高齢者医療が地域保険となります。

普通の会社に勤めている人は「健康保険」のグループのいずれかに加入しています。
大企業の健康保険は会社ごとにつくられている「健康保険組合」が保険者となります。
従業員数が数人程度の中小企業では全国1本の「全国健康保険協会」が保険者となります。これを「協会けんぽ」といいます。
かつては社会保険庁(現厚生労働省の一部)が統括していたので政府管掌と呼ばれていました。
平成20の10月に社会保険庁が消滅した際に全国健康保険協会が発足しました。ここが現在社会保険庁に代わって現在保険者として保険を管理しています。

公務員が加入するのが「共済保険」になります。
年金制度では共済組合がなくなってすべて厚生年金となりましたが、医療保険の分野ではこの共済組合は残っています。
この公務員が加入する「国家公務員共済」は1本の制度ではありません。
財務省は財務省共済組合、厚生労働省は厚生労働省共済組合、など役所ごとに異なる共済組合が存在しています。
地方公務員も1本の制度ではなく、東京都の職員は東京都職員共済組合、千葉県の職員は千葉県職員共済組合など小さなものがいくつも存在するという形になっています。

その他、船に乗って働いている人が加入するのが「船員保険」になります。この制度の保険者は政府になります。

これらが「職域保険」と呼ばれるものになっています。

地域保険の概要

国民健康保険は原則市町村ごとにつくられ、市町村が保険者となっています。

国民健康保険組合は都道府県単位で同業者同士が同じ健康保険組合をつくっている場合、例えば弁護士や医者などの裕福な自営業者が市町村の組合には加入せず、自分たちで組合をつくっているというものです。

サラリーマンや被扶養者以外の人たちはこの国民健康保険に加入することになります。

75歳以上になると、それまでどこの制度に加入していたかは関係なく後期高齢者医療制度に加入することになります。(その他65歳以上で寝たきり等の状態にある者)
この後期高齢者医療制度は市町村が都道府県ごとに集まってつくる「広域連合」という所が保健者となって管理しています。

まとめ

日本は全ての国民が貧富の差に関わらず平等に医療を受けることができる国民皆保険制度となっています。

この制度は一元化されているわけではなく、加入者ごとに細かく分かれています。

医療保険制度は大きく職域と地域とに分かれていて、サラリーマンとサラリーマンに扶養されている人は職域保険、自営業やアルバイト・パートの人たちが加入するのが地域保険となります。

そして職域保険は各職場ごと、会社であれば健康保険組合、公務員等であれば共済保険組合などに分かれています。

そして小さな企業は全国集まって協会けんぽという組合をつくっています。

地域保険は原則としては市町村ごとにつくられている国民健康保険があります。

そして75歳以上になるとそれまで加入していた制度から抜けて後期高齢者医療制度に加入することになっています。

参考資料


社会保障を問い直す 植村尚史(ウエムラヒサシ)著/2003/ISBN:  9784805844700

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