【日本の年金制度の基本その1】日本の年金制度の特徴である「皆年金」「社会保険方式」「二階建ての制度」「賦課方式」についてわかりやすく説明します。

日本の年金制度の概要 なぜ自費リハビリが必要か
日本の年金制度の基本・概要
  1. 目次
  2. 日本の年金制度のとくちょう
  3. 世界の年金制度
  4. まとめ
  5. 参考資料

日本の社会保障制度はかなり複雑になっていますが、そのなかでも年金制度はかなり複雑怪奇なものになっています。

勉強すればするほど…聞けば聞くほどわからなくなってくると思います。

【日本の年金制度の基本】としてその全体像について4回に分けてわかりやすく説明していきます。

今回は日本の年金制度の特徴である「皆年金」「社会保険方式」「二階建ての年金制度」「賦課方式」についてわかりやすく説明します。

日本の年金制度のとくちょう

  1.  1 皆年金
    社会保険方式
  2.  2 二階建ての年金制度
    (基礎年金と所得比例年金)
  3.  3 賦課方式
    (世代間扶養、社会扶養)

皆年金と社会保険方式

日本の年金制度の特徴の1つめは「皆年金」であるということです。

「皆年金」とはいいますが、みんなが年金をもらえるという意味ではありません。

もうひとつの特徴として「社会保険方式」があります。

「社会保険方式」とは保険という方法を使って社会保障の制度をつくっているということです。

保険とは何かというと、たくさんの人が集まってリスクを分散する仕組みのことをいいます。年金は社会保険方式でおこなわれている。つまり年金をもらうということは何らかのリスクが発生したということです。ではこの年金制度で想定されているリスクとは何なのでしょうか。それは働いてお金を稼いでいる人がお金を稼ぐことができなくなるというリスクです。

働けなくなるリスクを全てカバーすると制度が成り立たなくなるので年金制度ではこのリスクを3つだけに限定しています。

リスクの1つめは「老齢」つまり年を取って働けなくなった場合です。2つめは「障害」です。そして3つめは「死亡」です。

この3つが年金が保険としてカバーするリスク、つまり支給がおこなわれる要件ということで規定しています。

「皆年金」というのはこの3つのリスクが発生したときにはその他の要件なく誰もが年金をもらえるということです。ですが、社会保険方式なのでそれは普通の保険と同じように保険に加入して保険料を払っているということが前提となります。

ですがそうなると「皆年金」ではないということになります。

なので日本の場合の「皆年金」というのは一定の要件に当てはまるひとは全て保険に加入しなければならない。そして保険に加入して保険料を払っていれば一定のリスクが発生した場合に年金が受給できるということを意味します。

こういう意味の「皆年金」となります。

そしてこの「皆」というのはみんな年金に入らなければいけない。

という意味だということです。

ということで拠出に関係なく年金が受給できるわけではありません。保険料、つまりお金を払わないひとは年金がもらえません。みんながもらえるという意味の「皆年金」ではないということです。

社会保険方式である以上このような限界はやむを得ないことです。世界にはこの社会保険方式以外で年金を運営している国もあります。

これは保険ではなく3つのリスクが発生すれば全員が年金を受給できるという方式です。

このような方式は保険ではできないので税金で年金を支給するというかたちになります。これを「社会保険」に対して「社会扶助」といいます。

そして税金で年金を払う方式のことを「税方式」といいます。

二階建ての年金制度

「皆年金」という年金加入者全員をカバーしている年金として基礎年金という給付があります。制度としては国民年金という制度になります。

これが一階部分となります。

この一階の部分に対して二階部分が存在します。

この二階は一階の上にそのまま二階がのっかっているわけではありません。一階建ての平屋と二階建ての家があるという感じです。この二階部分をもらえる人は被用者、つまりサラリーマンといわれる人です。会社で働いていたひとは一階部分と+αでそれまでに働いていた所得に比例した年金をもらうことができます。

この上に企業で働いていたひとは企業年金がプラスされる場合があります。これは三階部分になります。ですが、これは強制加入ではないので日本の年金制度は一応「二階建て」となっています。

賦課方式

賦課方式という言葉は何だか分かりづらい言葉ですが英語では「Pay as you go」といいます。意味としては「現金払い」や「その都度払い」などと同様です。

賦課方式は年金の保険料を若い人が支払い、その保険料をそのまま右から左へ年金の給付に使ってしまうという方式のことです。

この賦課方式に対して「積み立て方式」というものもがあります。

こちらは年金の保険料を積み立てておいて、いざリスクが発生場合はその積み立てておいたお金を取り崩して使うという仕組みです。

日本の年金制度は賦課方式で運営されています。

厚生労働省でも年金制度についてわかりやすいサイトを運営されていますが、こちらでは賦課方式ではなく世代間扶養社会扶養という言い方をしています。

つまり若い世代、また社会全体が年寄りの世代を扶養しているという言い方をしています。

世界の年金制度

厚生労働省のサイトでは日本の年金制度の3つのとくちょうとして「二階建て」の部分は挙げられていません。

ですが世界でこの日本のように社会保険方式で二階建ての年金制度の国は稀です。

しいて言うと似ているのがイギリスです。

イギリスは一階部分があって後から二階部分を建て増したというかたちです。

ドイツやフランスは一階建てです。一階建てといいながら中身は日本の二階部分だけが存在するというかたちです。

スウェーデンは一階二階がかつてありましたが、それをやめてドイツやフランスと同じような一階建てにしました。

オーストラリアやカナダは二階建てですが一階の部分が税方式でおこなわれています。

一般的に「皆年金」といっている国は「税方式」で拠出に関係なく年金が受給できます。だから「皆年金」です。

社会保険方式で運営しているドイツやフランスでは「皆年金」ではありません。もともと年金制度というのは雇われて給料をもらって生活をしている人のためのものです。自営業などの人は年を取っても働けなくなるわけではありません。そういう意味で年金制度は任意加入となっています。なので「皆年金」ではありません。

このような意味で日本の年金制度は特徴的だということができます。

賦課方式に関してはほとんどの国がこの賦課方式をとっています。ですが厚生労働省のように「世代間扶養」という言い方をしている国はほとんどありません。

厚生労働省のサイトにわかりやすく説明されています。

こちらも併せてご参照ください。

まとめ

日本の年金制度はヨーロッパのものを真似てつくったといわれています。ですがそれから何度も改正を重ねてかなり複雑な制度となっています。

実はコロナ禍に乗じて2020年の3月に改訂がおこなわれていました。

複雑怪奇な年金制度ですが、そのとくちょうは「皆年金」「社会保険方式」「二階建ての年金制度」「賦課方式」という日本独自のものになっています。

参考資料




社会保障を問い直す

社会保障を問い直す:植村尚史

社会保障を問い直す/中央法規出版/2003.4.1/植村尚史著


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