年金制度は保険方式
一般の「〇〇生命」のような生命保険の場合その保険に加入する私たちのことを「被保険者」といいます。そして毎月保険料を受け取って何かあったらお金をくれる保険会社のことを「保険者」といいます。
日本の年金制度は「社会保険方式」です。つまり「保険」と同じ方式をとっています。
20歳~60歳までで年金保険料を支払っているひとのことを「被保険者」といいます。
1号・2号・3号被保険者という言葉は聞いたことがあると思います。普通の会社員であればさほど気にしないかもしれませんが、会社を辞めた途端に1号に変わる???? などよくわからないことが多いのではないでしょうか。
今回はこのよくわからない被保険者と年金制度の体系について説明します。
被保険者と保険者と受給者と日本年金機構
日本の年金制度は「皆年金」ですがみんなが年金をもらえるという意味ではなく、みんなが加入しなければならない。という意味の「皆年金」です。そして「社会保険方式」の「保険」には必ず保険者と被保険者が存在します。一般的には被保険者のことを加入者といいます。ただ年金制度には加入者だけではなく受給者(年金をもらっている人)もいます。
被保険者とは読んで字のごとく保険がかかっている人という意味です。
保険がかかっているということは保険料を払ってリスクが発生したら保険料をもらえる人という意味です。受給者というのは既にリスクが発生してしまっている人ということになります。したがって保険はもうかかっていないと考えるのが一般的です。
つまり被保険者にリスクが発生すると受給者に代わると理解してください。
そして保険者は保険をかける人です。保険制度を運営して保険料を徴収する人のことのことをいいます。日本の年金制度の場合この保険者は国民年金と厚生年金いずれも「国」になります。国を代表する人として厚生労働大臣がその代表者として保険者となっています。
ただ実際の実務は国が直接おこなうのではなく「日本年金機構」がおこなっています。
以前は国が直接運営をおこなっていて厚生労働省の中の組織である社会保険庁が実務をおこなっていました。ですがこの「社会保険庁」は平成21年の12月31日をもって消滅しました。そして翌年の平成22年から日本年金機構という公法人が設立されて年金の運営をすることになりました。
ではこの厚生労働大臣と日本年金機構の関係はどうなっているのでしょうか。
年金制度の保険者は厚生労働大臣です。この厚生労働大臣の指揮・命令を受けて日本年金機構が実務をおこなっているというかたちになっています。
1号・2号・3号って何?
第1号被保険者 第2号被保険者 第3号被保険者 20歳以上60歳未満の自営業者、 農業者、学生等
民間サラリーマン、公務員等 民間サラリーマン、公務員等に 扶養される配偶者
保険料は定額 令和2年4月現在月額16,540円
保険料は報酬に比例 平成29年9月から
18.3%労使折半で負担
本人は負担を要しない 配偶者が加入している被用者年金
の制度全体で負担
基礎年金の国庫負担割合については、平成21年度から2分の1
年金制度の被保険者は20歳~60歳までの全ての日本国民です。どのような仕事をしているかに関わらず必ず被保険者にならなければなりません。これが日本の「皆年金」の意味になります。つまり年齢以外に被保険者にならなければならない要因がほかにないということです。
この他20歳よりも前であっても誰かに雇われて給料をもらっている人は保険料を払って被保険者にならなければなりません。それから60歳以上になっても誰かに雇われて給料をもらっている人は被保険者にならなければなりません。
この被保険者の人たちは3つの1号・2号・3号のグループに分けられています。
どのように分けられているかというと基本的には働き方によって分けられています。
第1号は「その他の人たち」という2号でも3号でもない人たちとなります。後ほど詳しく説明をしますがまずはじめに2号被保険者から説明をしていきます。
第2号被保険者(サラリーマン等)と第3号被保険者
第2号被保険者は誰かに雇われて給料をもらっている人になります。民間であればサラリーマン、役所であれば公務員の人たちが2号になります。
そして第3号被保険者は第2号被保険者の人たちに扶養されている配偶者になります。俗にいう専業主婦の人たちが第3号になります。(差別用語かもしれませんがわかりやすく表記させていただきます。)
もちろん奥さんだけではなく奥さんが働いていて旦那さんが扶養されている場合は旦那さんが第3号となります。
ただ専業主婦(主夫)といってもパートや内職で働いている人もいます。
このような人たちは「いくら稼いでいるか」によって線引きされています。年間130万円というラインが引かれていてこれ以上稼ぐと扶養されていないという扱いになります。したがって年間の収入が130万円未満の人で誰かに扶養されている人が第3号被保険者となります。
アルバイトやパートなどで働いて年間130万円以上稼ぐと第1号被保険者となります。
第1号被保険者
第1号被保険者は第2号でも第3号でもない人たちのことをいいます。一般的には自営業や農業の人たちとされています。
ですがそれ以外に働いていないけれどサラリーマンに扶養されていないニートや学生、またフリーターやアルバイトの人たちが第1号被保険者となります。
ではサラリーマンとアルバイトで働いている人との線引きはどこなのでしょうか。
これは勤務時間で線引きされています。
原則としては通常の勤務時間の4分の3以上働いていると第2号になり、4分の3未満だと第1号になります。1号と2号の関係はいくら稼ぐかではなくどれくらいの時間働いているかになります。
通常の勤務時間が週40時間と定められているとすると週30時間以上働くと第2号になるということになります。
あくまでもこれは原則ですが2016年の3月から501人以上の従業員がいる企業は勤務時間が2分の1でも一定の給料をもらっていれば第2号になるということになりました。そして2017年4月からはもっと小さい企業でも労使間の合意で2号にすることができることになりました。
ですがほとんどこちらの方は普及していません。2020年の法改正で500人未満も2分1以上働いていれば順次2号被保険者にするということになりました。
段階的に変えたり企業の規模によって条件を変えたりしているので、ますます制度が複雑になっているということです。
年金制度の体系(iDeCoは3階部分)
上の図は厚生労働省が出している図です。一番上に iDeCo というものが入っています。これは個人年金の確定拠出型年金となります。
日本の年金の給付水準は諸外国に比べてかなり低い水準にあります。
これをなんとか少しでも高く見せたいという思惑があるのかはわかりませんが、個人年金の部分も年金制度と一緒に記載されています。
少しわかりづらい図ですが3階部分が企業年金とiDeCoの一部となっています。これを除いて年金制度の体系は1階・2階建てでなり立っています。
1階部分が国民年金(基礎年金)となります。
これは1号・2号・3号の人たち全てをカバーしている制度になります。この制度のことを国民年金といい、この制度から給付されている年金を基礎年金といいます。
そして
この国民年金の対象となっている人の中で第2号の人たちの上にだけ2階部分があります。
これが厚生年金部分となります。
上の図では会社員と公務員がわかれています。
以前は会社員(民間のサラリーマン)は「厚生年金保険」そして公務員は「共済組合の年金」というかたちになっていました。
現在は共済年金と厚生年金が合体して大きな厚生年金というものになりました。
したがって2階は厚生年金に1本化されています。
まとめ
日本の年金制度の被保険者は1号・2号・3号に分かれています。2号はサラリーマン、3号は2号に扶養されているひと、1号はそれ以外の人たちとなっています。
2号と3号の関係は稼いだ金額によって変わり、1号と2号の差は働いた時間によって変わります。
また年金制度の体系からわかるように1号と3号の人は基礎年金を受給でき、2号の人はその上の厚生年金もプラスしてもらうことができるということです。
参考資料
社会保障を問い直す/中央法規出版/2003.4.1/植村尚史著
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