【日本の年金制度の基本その3】年金っていくらもらえるの?「老齢年金」「遺族年金」「障害年金」についてわかりやすく説明します。

日本の年金制度の概要 なぜ自費リハビリが必要か
日本の年金制度の基本・概要
  1. 目次
  2. 公的年金の給付の種類
  3. 老齢(退職)年金
  4. 老齢(退職)年金ともらえる金額
  5. 遺族年金
  6. 障害年金
  7. まとめ
  8. 参考資料

【年金制度の基本その2】被保険者について説明しました。この被保険者の人たちが一定の要件に該当すると年金がもらえます。つまり受給者になるということです。
このある一定の要件とは何かというと働いている人がお金を稼ぐことができなくなるということです。この要件として「老齢」「障害」「死亡」の3つがあります。

年金の給付の種類もこの要件にしたがって「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3つがあります。

今回は公的年金の給付についてわかりやすく説明していきます。

年金制度の基本その2 被保険者に関してはこちらをご参照ください。

公的年金の給付の種類

  1.  給付の原因
  2.  (1)老齢になった場合
  3.  (2)病気やけがで障害を有することとなった場合
  4.  (3)年金受給者または被保険者(加入者)が死亡した場合
老齢(退職)年金 障害年金 遺族年金
基礎年金 老齢基礎年金 障害基礎年金 遺族基礎年金
厚生年金 老齢厚生年金 老齢厚生年金 遺族厚生年金
(共済年金) (退職共済年金) (障害共済年金) (障害共済年金)

上の表のように「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3つのそれぞれに基礎年金厚生年金があります。

その下に( )で共済年金があります。これは無くなって厚生年金に統一されましたが、昔の部分については共済年金で出ている部分もありますので記載しています。

では「老齢(退職)」「障害」「遺族」それぞれの年金の給付について説明します。

老齢(退職)年金

一番受給者が多い…。というかほとんどの人が受給するのが老齢(退職)年金です。

老齢(退職)となっていますが退職しないとリスクが発生したとはいえないのでもらえないということになります。そして退職しても一定年齢に達しないともらえません。したがって老齢+退職年金ということになります。退職しなくてももらえる「在職老齢年金」や退職しなくてももらえるけれども支給が停止されるなど細かいこともあります。ここではある年齢に達したら受給できる老齢年金について説明します。

老齢(退職)年金ともらえる金額

  1. 老齢基礎年金
  2. 満額の場合 月額 約6万5100円(令和2年度)
  3. 平均年金額 月額  5万5708円(25年以上)
  4. 厚生年金(基礎年金を含む)
  5. 平均年金額 月額 14万5865円

データ出典:平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況

老齢基礎年金

1号・2号・3号の人みんながもらえる年金を老齢基礎年金といいます。

これは年齢が65歳になるともらえる年金です。

この老齢基礎年金は定額の年金といわれています。この定額という意味はそれ以前の所得に関係なく一定の金額がもらえるという意味です。ですが加入した期間や払っていた保険料の納付期間によって金額が異なります。従前所得に関係なく一定の金額が受給できるため定額といわれています。20歳~60歳までの人は必ず年金に加入しなければならないことになっています。この期間満額保険料を支払っているはず、というのが定額の計算の根拠になっています。

40年間欠かさず保険料を支払ったうえで受給できる金額が月額で約6万5100円となります。

この金額は物価スライドなどがあり若干上下します。

途中で何らかの理由で保険に加入していなかった人、また何らかの理由で保険料を払わなかった人がいます。また65歳から年金の受給ができますが、前倒しで受給する人や先送りする人がいます。それぞれの理由によってこの約6万5100円という金額に違いが出てきます。

このような人たち全ての受給額の平均は5万5708円です。実際には満額の金額に満たない人たちがたくさんいるということになります。

第3号の人は保険料を納めなくても届け出さえしておけば保険料を納めたのと同じような計算で満額の年金を受給することができます。例えば20歳のときは学生で卒業してOLになって2号になる、そして結婚して専業主婦(3号)になったとします。そういった場合も1号・2号・3号通算して40年あれば満額の年金を受給することができます。

これが老齢基礎年金になります。

1号・2号・3号など受給者の区分に関してはこちらをご参照ください。

老齢厚生年金

老齢厚生年金は基礎年金にプラスしてもらえる年金がです。

こちらは所得比例の年金です。つまり従前所得がいくらかによって年金の額が変わってきます。

老齢厚生年金平均月額は14万5865円です。この金額は基礎年金を含んだ金額です。
この平均月額14万5865円の中には一時的に保険料を払っていなかった人も含まれています。

この平均額以外に「モデル年金」というものがあります。モデルとするような人、保険料を満額支払っていて平均的な所得がある男性の場合は15万6000円ほどになります。平均よりも1万円ほど高くなっています。このモデルは専業主婦の奥さんの基礎年金の分も足して世帯での金額にすると月額22万円受給できるということになっています。

このモデルは平成25年に示しされたモデルでそれから実際には物価スライドがあり変化していますがだいたいこの辺りがモデルとして示されています。

この「モデル年金」ですが実際の平均が違うのではないかという意見もあります。それはこのモデルが男性だということです。モデルの男性と専業主婦の年金を合わせた金額を「モデル年金」として示しています。一方で一般の平均額は男性・女性合わせた金額となっています。日本の社会では男性の方が所得が高い場合が多くあります。そのため男性の方が年金が高くなります。

厚生年金の支給開始年齢は基礎年金と同じ65歳です。基礎年金の方は65歳で統一されています。厚生年金は以前は60歳だったときがあり、60歳から65歳に引き上げをされる途中にあるということで65歳よりも前に受給している人もいます。

原則としては老齢年金は65歳から受給できるということです。

現在またさらに支給開始年齢を引き上げようという動きが出てきています。したがって先のことはわからないという状況になっています。

遺族年金

遺族年金遺族基礎年金遺族厚生年金とに分かれています。

この遺族基礎年金遺族厚生年金ではもらえる要件が異なっています。

2号被保険者の人でも遺族厚生年金はもらえるけど遺族基礎年金はもらえないというケースがあり得ます。

遺族基礎年金

まず遺族基礎年金はどういう人がもらえるのでしょうか。

これは原則亡くなった人の配偶者しか受給できません。

しかも18歳未満の子供を扶養している場合に限ります。

これは昔「母子年金」と呼ばれていたもので子供がいないと遺族基礎年金はもらえないということになります。

もし配偶者がいない場合は18歳未満の子供が受給者になることができます。原則は配偶者ですが子供の場合もあります。

「母子年金」という言葉だったように以前はこの配偶者は奥さんだけでした。ですがこれは男女差別なのではないかということで2014年の4月に制度改正されて現在は夫も受給することができるようになりました。

これはあくまでも亡くなった人に扶養されていた人が受給することができるというものです。

扶養の条件に関してはこちらをご参照ください。

遺族厚生年金

遺族厚生年金の場合は遺族基礎年金よりももらえる遺族の範囲が広くなっています。

亡くなった人に扶養されていた配偶者は全て遺族厚生年金を受給することができます。妻はもちろん夫も受給できさらに小さい子供がいなくても受給することができます。また所得に関しても扶養されていたということなので一定の所得があっても遺族厚生年金を受給することができます。

ただ例えば若い奥さんや子供もいない場合、また扶養されていたけれどもそれなりに自分の所得があるという場合には有期(ずっともらい続けることができず一定期間で打ち切られる)も定められています。

一般的にこの遺族厚生年金というのはどのようなケースが多いのでしょうか。

それは夫婦そろって年金をもらっているというケースです。

そのような場合に夫が先に亡くなってしまうと年金額が大きく下がる場合があります。このために夫の厚生年金部分の4分の3を遺族厚生年金としてもらうということができるようになっています。

これが実際に遺族厚生年金が支給されるケースの大半となっています。

ただ例えば夫が亡くなったけれども妻も老齢厚生年金を受給していたという場合はどうでしょうか。

老齢厚生年金が少ないので遺族厚生年金も必要だという場合は、自分の老齢厚生年金と夫の遺族厚生年金が調整されます。調整の方法はいろいろあります。ただ場合によっては遺族厚生年金をもらってしまうと自分の老齢厚生年金がもらえなくなるという場合もありました。

それに対して自分は働いて毎月保険料を納めてきたのにこれはおかしいのではないかという意見があがりました。そこで平成16年の制度改正で遺族厚生年金を受給する場合は自分の老齢厚生年金は全額もらって調整の計算上+αが出る場合はその+αの部分だけを遺族厚生年金としてもらえるということに変わりました。

扶養の条件に関してはこちらをご参照ください。

障害年金

障害年金は病気やケガなどで障害者になり働けなくなった場合にもらえる年金です。

その障害の程度によって1級と2級に分かれます。1級の方が障害が重いので1級の方が年金額が多くなっています。

第2号の場合は障害基礎年金の他に障害厚生年金がもらえます。

この1級・2級の方はどちらも同じ基準となっています。

障害厚生年金の場合にのみは3級というものがつくられています。

つまり1級・2級よりも障害が軽くても障害厚生年金がもらえるということです。ただし障害基礎年金の方はもらえません。二階部分だけがもらえるということです。もちろん額は少ない金額ですが第2号被保険者だけがもらえる3級の障害厚生年金があります。

まとめ

いかがですか?自分のもらえる年金の額を知って驚いた方も多いかもしれません。

  • 老齢基礎年金
  • 満額の場合 月額 約6万5100円(令和2年度)
  • 平均年金額 月額  5万5708円(25年以上)
  • 厚生年金(基礎年金を含む)
  • 平均年金額 月額 14万5865円

遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」がありそれぞれもらえる要件が異なる。

「障害厚生年金」にのみ3級があり軽い障害でも申請をすれば年金が受給できる。

ややこしい日本の年金制度ですが、厚生労働省の「いっしょに検証!公的年金」でマンガでわかりやすく説明されています。

こちらも一緒にご覧になってみてください。

参考資料




社会保障を問い直す

社会保障を問い直す:植村尚史

社会保障を問い直す/中央法規出版/2003.4.1/植村尚史著


若者が求める年金改革
―「希望の年金」への途を拓く


図表で見る社会福祉施設
の現状と課題


これでわかる医療保険制度Q&A
(シリーズ・暮らしを支える福祉の制度)

コメント

PAGE TOP