私たちの年金は大丈夫?「消えた年金問題その1」年金の運営をおこなう日本年金機構についてわかりやすく説明します。

消えた年金問題 なぜ自費リハビリが必要か
年金制度の実施体制・消えた年金問題
  1. 目次
  2. 公務員は年金を多くもらえるの?
  3. 厚生年金の運営をおこなう日本年金機構
  4. 国と厚生労働省の役割
  5. 日本年金機構の実施体制
  6. 年金ってどうやって加入するの?
  7. 厚生年金の手続きは会社と年金事務所
  8. まとめ
  9. 参考資料

現在日本の年金制度の運営・管理は「日本年金機構」という法人組織がおこなっています。私たちの身近にある「年金事務所」は「日本年金機構」の組織下にあります。

会社で働き始めるときに年金手帳を提出して会社側に手続きをしてもらいます。これは個人の会社でも同様です。

「消えた年金問題その1」今回は年金の運営と手続きについてわかりやすく説明していきます。

公務員は年金を多くもらえるの?

現在年金は国民年金と厚生年金に分かれていますがそれぞれ実施の体制・実施の方法が異なっています。

以前は公務員のみが加入できる共済年金という別だての制度がありました。サラリーマンでいうところの厚生年金の部分です。共済年金には「職域加算」という年金に上乗せする分のお金がありました。(これは三階部分になります)ですが平成27年の10月に共済年金は厚生年金に統合されました。

厚生年金に統合されたといってもいつからいつまで…というような記録自体はまだ完全に統合されていません。その記録自体は職場が持っています。計算方法は統一されているので記録を引き継いでしまえば計算できます。ですが現実にはまだ記録は引き継がれていません。そのため共済期間を持っているひとは両方から別々に年金が出るようなかたちになっています。したがって実施体制上はなんら統合されていないということになっています。

厚生年金の運営をおこなう日本年金機構

2021年現在、厚生年金の制度を運営・管理しているのは「国」です。

厚生年金は「社会保険方式」という仕組みで運営・管理されています。「社会保険」はつまり「保険」なので保険を管理する「保険者」と保険に加入している「被保険者」の両者が存在します。

「被保険者」は保険料を支払います。その保険料を定められた要件で支払っていれば一定の年齢になると給付が受けられます。

厚生年金の「被保険者」というのは民間の企業に勤めるサラリーマンになります。

厚生年金の「保険者」は「国」です。この国には様々な機関が存在します。

厚生年金の場合は厚生労働省という国の中の役所がおこなっています。

従来は実際の事業運営を国が直接おこなっていました。

以前は厚生労働省のなかに「社会保険庁」という組織がありました。そこが保険料を集めたり年金を給付したりなど実際の業務をおこなっていました。ですがこの「社会保険庁」は平成21年の12月31日をもって消滅しました。

そしてその翌年の平成22年の1月に「日本年金機構」という新たな組織ができました。これは何かというと公法人、つまり公の法人というかたちで一応法人組織として運営されています。なのでそこで働く職員は公務員ではありません。

平成22年の1月から年金制度の実務はこの「日本年金機構」が運営することになりました。

国と厚生労働省の役割

ではこの保険者である国と日本年金機構の関係はどうなっているのでしょうか。

保険者である国の中の行政機関である厚生労働大臣が業務・運営を「日本年金機構」やらせている。つまり運営委託・業務委託という形態になっています。

したがって厚生年金の財政に責任を持っているのは国ということになります。

そのため国は特別会計の中の厚生年金の勘定というかたちで国の中に財政を置いています。つまり財布を持っているということです。

なので保険料が入ってくればその財布(特別会計の収入)の中にお金が入ってきて年金を支払えば財布からお金を出すということになります。

国の場合は単年度収支ということで1年ごとに収支が確定します。このような会計方式なので国の収入のことを「歳入」といいます。そして支出のことを「歳出」といいます。

したがって保険料は国の「歳入」となり支払った年金は国の「歳出」となります。

被保険者であるということを示すものとして「年金手帳」がもらえます。そして受給者であることを示すものとして「年金証書」というものがあります。

これらはいずれも厚生労働大臣の名前で発行されています。

日本年金機構の実施体制

年金制度の運営・管理などの業務は「日本年金機構」請け負っています。

この「日本年金機構」はどのような組織になっているのでしょうか。

基本的には旧社会保険庁のかたちを引き継いでいるかたちになっています。

「日本年金機構」の職員の大部分は旧社会保険庁の職員となっています。それまでは公務員でしたが組織がなくなったので民間の企業に採用されたというかたちになっています。

日本年金機構の業務

厚生年金の運営に必要な業務としては次のようなものがあります。

まず被保険者であることを認める「適用」という業務、また保険料の徴収する業務、それから保険料を徴収してきた記録を管理する業務、自分は年金がいくらもらえるのか、また記録の確認などに答える相談業務、そして年金権があることを国に代わって認める「裁定」という業務、実際に年金を支払う「給付」という業務があります。

つまり「適用」「徴収」「記録管理」「相談」「裁定」「給付」というこの一連の業務は「日本年金機構」がおこなっているということになっています。

日本年金機構の組織

日本年金機構の組織図

日本年金機構の組織体制

「日本年金機構」の組織が上の図になります。

本部が東京の高井戸にあります。その下に9つのブロックに分かれてブロック本部があります。

そしてその下に「年金事務所」があります。

受給者や被保険者と直接かかわるところがこの「年金事務所」になります。この「年金事務所」は全国で312箇所存在します。

この他に「まちかど年金相談」というところが67箇所あります。これは年金機構の職員が直接相談を受けているのではなく、社会保険労務士会に委託をしています。ですから社会保険労務士が相談を受けています。

年金ってどうやって加入するの?

では実際の手続きはどのようになっているのでしょうか。

まず加入の手続きから説明します。

加入の手続きをしなければならないのは厚生年金の被保険者になる本人ではありません。手続きしなければならないのはその被保険者になる人を雇う会社になります。

会社というのはひとつは法人組織です。株式会社や有限会社などのことです。また個人が事業主になっている場合は5人以上の人を雇っていれば従業員を厚生年金に加入させなければならないことになっています。

厚生年金よりも国民年金の方が得?

例えば商店街の八百屋などでも株式会社として登記しているとします。そしてお父さんが社長でお母さんが専務だとします。

このような場合でも会社がお父さんとお母さんを雇っているというかたちになります。したがって厚生年金に加入しなければいけないことになっています。

ところが現実には厚生年金には加入せずに国民年金に加入しているという人がほとんどです。

ただこれは違法です。

違法ですが1件1件調べて回ることはできないので事実上野放しになっているというのが現状です。

現在マイナンバーが導入されたことによって税金の情報と年金の情報を簡単に照合できるようになりました。したがって法人企業であればすぐに見つけることができます。

実質的には個人営業なのに形式的に法人にして税金を安くしようとしているところもあります。そのようなところの多くは厚生年金に加入せず、保険料の安い国民年金に加入したままにしている場合があります。

厚生労働省側はそういうところは今後順次指導をしていくと言っています。

マイナンバー制度が導入され、年金の情報である基礎年金番号とマイナンバーを結び付けるという計画がありました。ですがその連結の予定は現在延期されています。

なぜかというと連結の前に基礎年金番号が大量に流出したということがあったからです。そのため連結してしまうと金融情報などと紐づいているマイナンバーが簡単に漏れてしまうのではないかというおそれがあります。そのため少しの間この基礎年金番号とマイナンバーの連結が延期となっています。

もしこれがつながれば厚生年金からは逃れられないということになると思います。

厚生年金の手続きは会社と年金事務所

厚生年金に従業員が加入しなければならないような事業所を「適用事業所」といいます。

厚生年金は会社単位ではなく事業所単位というかたちになっています。会社によっては支店ごとに別々に加入しているケースがあります。

「適用事業所」という事業所単位になっているので、その事業所を管轄している年金事務所に届け出をしなければなりません。その届け出には雇った従業員の住所・氏名・給与などを書いて届けます。その届け出が受理された段階でその従業員は厚生年金の被保険者になります。つまり被保険者資格を取得するということです。これを「資格取得届」といいます。

ただこれらの届け出、受理等は会社と年金事務所の間でおこなわれます。

本人はあずかり知らないところでおこなわれることになります。つまり会社に雇われた時点で自動的に被保険者になっているということです。

高井戸のコンピューター

この届け出を受けて年金事務所は被保険者の台帳をつくります。台帳と聞くとイメージ的には1枚1枚の紙のようなイメージですが実際にはコンピューターで管理されています。

国民年金届け出業務等の流れ

国民年金届け出業務等の流れ

このコンピューターは上の図のセンターコンピューターという本部にあるコンピューターに入ります。

これは「高井戸のコンピューター」と呼ばれています。

ですが実際にはコンピューター自身は三鷹にあります。三鷹のNTTデータの建物を借り上げてそこにコンピューターが置いてあります。

まとめ

私たちから年金の保険料を集めたり「老齢」「障害」「死亡」など年金を受給するようになったらなどなど…年金の運営をおこなっているのは「日本年金機構」という法人組織です。この「日本年金機構」という組織の中には私たちの身近にある「年金事務所」があります。

会社などで働くときには「年金手帳」を会社に提出します。すると会社側が年金事務所に行って手続きをおこなってくれます。この手続きは私たちのあずかり知らないところでおこなわれています。

私たちの年金のデータは現在はコンピューターによって一元管理されています。

現在コンピューターによって管理されているデータですがそれ以前は「年金事務所」の職員による手作業でおこなわれていました。そして現在このデータの一部はバラバラになって散らばってしまっています。

「消えた年金問題」なぜ年金が消えたのかはこちらをご参照ください。

年金の給付に関してはこちらをご参照ください。

参考資料




社会保障を問い直す

社会保障を問い直す:植村尚史

社会保障を問い直す/中央法規出版/2003.4.1/植村尚史著


若者が求める年金改革
―「希望の年金」への途を拓く


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の現状と課題


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(シリーズ・暮らしを支える福祉の制度)

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